動物の利用状況のモニタリング
設置後パスウェイ内の映像を24時間録画し、動物の利用状況をモニタリングしました。敏捷な動物の動きを記録して今後の研究に活かすため、限られた予算の中でできるだけ高画質の映像を保存するよう心がけました。
実証機
橋の隣に設置した柱にビデオカメラを設置し、日中はカラーで昼行性動物を、夜間はモノクロ赤外線撮影で夜行性の動物を記録しました。HDDレコーダは現地の電工BOX内に設置しました。
架設地に電気が通っていなかったため、バッテリーでの運用となりました。太陽光パネルなども試しましたがなかなかうまくいかず、HDDの回収とバッテリーの交換に苦労しました。
公道でのアニマルパスウェイ運用開始に伴い、実証機でのモニタリングは終了しています。
北杜市1号機
システム概要
パスウェイ両端に2台のカメラを設置し、日中はカラー・夜間はモノクロ赤外線で撮影しました。パスウェイからヤマネ研究施設まで通信ケーブルを敷設し、屋内のHDDレコーダに映像データを伝送して保存しています。
機材と設備の詳細
カメラは、ライト・夜間赤外線照射・ヒーター・ファンを持つハウジングに納め(写真左)、厳しい気候の清里で長期の屋外利用を可能にしています。データ伝送のための送信機(写真中央の白い箱)もハウジング内に納めています。
カメラの設定に何度か試行錯誤しました。
昼間の工事ではわからなかったのですが、夜の映像で床の銅メッシュが反射し見づらくなっていました(写真右)。朝・夕日などの太陽光線がレンズに入ると、センサーが誤動作を起こすこともあり、設置場所や角度には注意が必要です。
2台のカメラから送られてきた映像データは、受信機で受けてレコーダーに送られます。
HDDレコーダは防犯用途を想定したの業務用の機種で、カメラ2台分の映像データを同時に記録しています。動体検知機能が搭載されていますが、野生動物には活用できませんでした。
自然の中では、風により本体や樹木の枝葉が揺れ、太陽の光量や角度が時間・天候・季節によって大きく変化します。映像解析により、樹上性動物の利用箇所を自動で検出することの難しさを感じました。
野生動物のためのセンサリングシステムも市販されていますが、高所で敏捷な小動物を検出することは難しそうです。
導入直後は通信ケーブルでのデータ伝送が安定せず、映像ノイズに悩まされました。
調整によりだいぶ軽減しましたが、現在も天候等の要因で映像が乱れることはあります。
また、設置場所は標高が高く、落雷による送信機の故障も多発しました。録画の中断や修理コストなど、大きな影響を受けました。
録画後のワークフロー 〜 映像の確認と保存 〜
HDDに記録した映像は、研究会やボランティアが目視で動物の利用部分を確認し、DBへの入力と動画の切り出し(クリッピング)を行っています。レコーダの独自のファイルフォーマットは画質が粗く、パソコンでの再利用もしにくいため、ハードウェアMPEGエンコーダを介してパソコン上でクリッピングしています。
2台のカメラの24時間分の映像は膨大で、確認作業はなかなか捗りませんが少しずつ行っています。
成果
リアルタイムモニタリング
利用記録情報と動画のDB化
2010年2月現在、解析が完了した録画映像は約2,900時間、動物の利用記録は1600件以上、クリップされた動画ファイルは700以上にのぼります。2010年3月には湊氏より日本生態学会でその内容が報告されました。
今後の課題
実証機と北杜市1号機の結果を踏まえた今後の課題です。北杜市2号機は、現地に2台のカメラとHDDレコーダーを設置して運用する予定です。
現行のモニタリングシステムの課題
- 規格マニュアル化
- 機材の低コスト化
- 動画データ回収および DB化の効率向上
- 各種センサー導入による撮影の効率化
- 森や導入路のモニタリング
- 静止画(写真)によるモニタリング 等
「普及型モニタリングシステム」の開発
研究目的のモニタリングでは、高画質・高精細な動画を確実に保存するために高スペックの機材や多くの作業時間が必要になります。
普及型アニマルパスウェイを一般の道路等に設置した場合、動物が利用したかどうか・いつどんな動物が利用したかを確認するのが主な目的となるでしょう。
「研究用」よりハードルを下げ、別の視点でモニタリングシステムを開発する必要があります。
- 研究用より低コストな機材の検討
- 上記機材によるワークフローの検討と検証
- 静止画(写真)によるモニタリング方法の確立 等